昇り龍
昇り龍をテーマにした作品。
龍神信仰のある方がこの作品を前に日々、祈りを捧げていただいている尊い姿が目に浮かびます。
心象風景としてたらし込みを用いて下から上へと上昇するイメージを描いたこの作品には龍神さんが顕れました。たらし込みは、100%コントロールできるものではなく、意識と無意識の間から生まれる産物でもあるゆえ、そこに醍醐味と面白みを感じます。毎回毎回が1度きりの見極めが問われるのです。今ある景色に手を加え制作を進めると言うことは、二度と戻れぬ景色に足を踏み入れることでもあります。やっぱりやめたとはならないですし、元ある場には戻れません。目の前の一期一会の瞬間をどう捉えるかで、その作品が持つ方向性も表情も風合いも大きく変化してゆきます。
だからこそ、ぼくの唐紙は、そこに人智を超えた神さまが宿るのだと考えています。
さりげないことだけど、今回の作品には初めての試みがあります。おそらく、歴代、誰もそのようなことをしてなかったであろうことに挑戦しています。モノゴトの革新を引き起こす変化というものは、誰の目にも一目見て顕著にわかる変化もありますが、一方では言わなければわかならいような微細な変化がもたらす革新というものもあるのです。
2022年4月
唐紙師トトアキヒコ