文様を重ね、メッセージからポエジーへ

トトアキヒコは、文様がもともと持っていた力を解き放ち、
あらたなメッセージを生み出す試みにも取り組んでいます。

「例えば、流水は流水、星は星だし、
龍は龍の文様として伝えてきたのが従来の唐紙ですが、
ぼくの場合は、水面に星を写し、
そこに龍を描いて 《星に願いを》という作品になります。
渦の唐紙は、その規則性に変化を与え、
エネルギーを象徴する渦をランダムに配してうねりを与え、
その不揃いな絵の具の表情が特徴となります。
意図しないことを意図する、
無我の境地から生まれることを願った唐紙は、
水の神さまと共に手がけたと考えて、 水の神様、
ミズハノメから《ミズハ》と名付けました。
抽象でも具象でもない文様を重ねて意味と意味を結んでゆき、
物語を生み出すことによって、 唐紙にポエジー、詩情を与えたかった。
心象風景を唐紙に写すことは、前人未到の試みとなりました」。

◎出典
トトアキヒコ・千田愛子「人生を彩る文様」(講談社/2020年)